会長挨拶
第67回日本麻酔科学会年次学術集会の開催にあたって
(慶應義塾大学医学部麻酔学 教授)
日本麻酔科学会第67回年次学術集会会長を務めます慶應義塾大学医学部麻酔学教室の森﨑浩です。年次学術集会を開催させて頂くにあたりご挨拶申し上げます。
第67回年次学術集会は2020年6月4日(木曜)~6日(土曜)の3日間、神戸で開催致します。申し上げるまでもなく、今年は東京オリンピック・パラリンピック開催年となり、昨年のラグビーワールドカップに続き、スポーツを通じた国際交流が全国各地でより一層盛り上がることと存じます。世界最高レベルの競技を目の当たりにして、我々が素晴らしいと感じる想像を超える「技」「精神力」あるいは「チームプレー」は必ずしもスポーツに限定されたものではありません。専門職として日頃の研鑽を通じ、より質の高い医療を提供している医師にとっても極めて重要な3要素であると考えています。日常診療においては、金・銀・銅のメダルや順位を競う必要はないものの、我々も学術集会をはじめ様々な研鑽の場において、これらの素養を研ぎ澄ます必要があることには違いありません。
本学術集会のテーマを『近未来社会における麻酔科学(Anesthesiology in Futuristic Society)』とさせて頂きました。昨今、関連領域医学や工学を含む周辺領域の著しい発展に伴う手術適応年齢の高齢化が一段と進み、全身麻酔を必要とする手術件数は増加し続けています。また医の根源でもある慢性痛の治療を必要とする患者数増加やより高度な集中治療による急性期重症患者の救命率向上等、我が国の麻酔科医が果たすべき役割は一段と拡大し、留まる様相を見せていません。一方、人工知能が人類の知能を超える転換点シンギュラリティとその後の世界の変化に対し、大きな期待と不安が世間では渦巻いています。医療界においてもビッグデータ解析や画像診断等に加え、例えば人工知能を搭載する全脳型あるいは特化型ロボット等の技術革新を“より安心して”“より安全に”麻酔科医が担う医療に展開することも、日本麻酔科学会として真剣に取り組むべき時期に来ていると考えています。加えて、昨今の再生医療の展開が現実味を増し、ゲノム解析による個別化医療など、そう遠くない近未来社会においてこれまでにない革新的な展開が間近に迫ってきています。こういった背景を踏まえ、第67回学術集会では『近未来社会における麻酔科学』を様々な面から会員の皆様が考え、共有する機会としたいと思案しています。
日常業務に多忙な日々をお過ごしのことと存じますが、来る2020年6月4日より3日間は神戸に集い、本学術集会での議論を通じて麻酔科医としての素養を大いに研ぎ澄まして頂く機会となれば幸いです。
多くの皆様のご参加を心よりお待ちしております。